マイスター事業協同組合の取り組み

氷見市惣領(そうりょう)にあるマイスター事業協同組合の代表であり、絆の森整備事業のリーダーをしている正保久男(しょうぼひさお)さん。1)現役の大工さんでもある。地場産の杉で建てられたというマイスター事業協同組合の事務所は、杉のいい香りと温もりのある手触り。2)とにかく、なによりも心地いい。

氷見の山に植林されているのは、ほとんどが杉の木である。3)平成元年、3人の工務店経営者が中心となり『地場産の杉を使おう!』という思いから勉強会を始め、平成5年にマイスター事業協同組合として立ち上げた。そして、平成11年より、国・県・市の補助を受けマイプレカット工場4)を建てた。「何よりも大工として残したい技術の継承がある。」と正保さんは強く言い切る。

伝えたい、地場産の杉のよさ

「昭和40年代から安い外国の木材が入ってくるようになりましてね。地場の杉は、弱いとか、節があるとか、だめやだめやと言われて、山が放置されるようになってしまった。自然がいっぱいあるように見えても、ほとんどは手入れもされず、光も入らない暗い森です。でも、それなら欠点を長所に変えることが、必要でないかと思ってきたんですよ。地場で育った木は、その地域の環境、あるいは天候に合っている。氷見は、雨、雪が多い。地場の木は、それを調湿してくれます。5)それから、二酸化炭素を吸収して閉じ込めてくれる。地元で生産されたものを地元で使う、木も地産地消ですよ。」と、正保さんは、いたって前向きである。

「ただ、良さを口で説明してもむずかしいので、我々が自らモデルになるようにと、組合の事務所を地場産の杉で建てたんです。6)壁は土壁で、床下と壁には断熱材として籾殻(もみがら)を敷き詰めてあります。それから、手作りの家具もすべて杉です。建てて5年経ちますが、今でも木の香りがあるでしょう。夏は涼しいし、冬は暖かいんですよ。ここの建物はほとんど再生ができ、使えなくなっても自然に返る素材です。家は50年から100年持つように建てます。次の木が育つまでにそのくらいかかるから。昔は、そういうサイクルだったんですよ。」環境にも人にも優しい先人の知恵と技が、正保さんの熱い思いによって現在へ再び現れようとしている。

絆の森整備事業
“森林(もり)つくり、道つくり”の取り組み

「絆の森整備事業は、“とやま森林(もり)と人ネットワーク” という任意団体が平成14年度から立ち上げ、今年で4年目になります。地域、子どもたち、一般市民の方々がボランティアをしてくださり7)力を合わせて森林整備を行っております。8)それを行政の方が、僕らの思いを聞き取って、国の補助事業として当てはめてくださったんですよ。それから、去年まで漁業関係の方たちは単独で森林整備や海岸清掃をしておいでたんですが、今年から一緒にやりましょうと声をおかけしたんですよ。9)海と山が一緒にやっていくことで、更に広がっていくだろうと思っています。ボランティアで参加してくださる方々は、まずは楽しみながら。整備した森に光が入り、おいしい風が通る。次の年には新しい草が生え、いきいきとした森の姿が見られる。そうすれば、森から海へと流れていく、森のエキスの恵みがわかっていただけると思っております。“森林(もり)つくり、道つくり”の取組みをしているのは、僕が担当している飯久保地区、正木さんが担当している西朴木地区、今のところ2ヶ所だけなんです。皆さん、どんどん遊びに来てください。」
富山県内では、この民間主導型の森林整備は初めての取り組みである。

飯久保地区の森は宝の山

実際に絆の森整備事業を行っているという場所に案内して頂いた。入り口に踏み入った瞬間、一同に言葉が止まってしまった。両側からすっと伸びた竹林の先が、遥か頭上で寄り添うように重なり合い、竹ドームのような形をつくっている。10)これが自然に形づくられたとは・・・。あまりにも幻想的で美しい。氷見の人も知らないだろうなと、得した気分になった。お奨め“隠れスポット”である。氷見といえば海のイメージであるが、本当に山もすばらしい。
ちょうどこの日は、氷見市立十三中学校の3年生の総合学習でこの竹林の整備が行われていた。泥んこになって重い竹を運ぶ生徒たちのなんとも楽しそうな笑い声や、先生との冗談を交えたやり取りが響いてくる。11)
「飯久保地区の森には、歴史的なものがたくさん残っていて、飯久保城跡、それから、古墳が20ヶ所以上もあるんです。森林整備を通して、地域の歴史を見直すことができる。また、地域の中で子どもも大人もコミュニケーションが生まれる。氷見市立湖南小学校の4年生は、自分たちで切り出した竹で楽器つくりに挑戦しています。まさに、宝のような森だと思っています。今の子どもたちが大人になって、自分の子どもに誇りを持って言える地域でありたいと願っています。」
絆の森整備事業、マイスター事業の活動を通して、どうすれば地場産の杉を使っていけるだろうかと、一生懸命取り組んでいる正保さん。これらの取り組みが、もっともっと大きな波となりうねりとなって、広がっていくといい。次の世代につなげる大切なものを失わないように・・・。応援します!!

2005年11月15日(火)取材
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